恋する季節 5 

 稲垣にタバコをもらって何くわぬ顔で部屋に戻ると、デスクについて専務のフロッピーのチェックを始めた。専務自ら上海に飛んで工法の説明をするのである。こういうのって別に僕の仕事じゃないんだけど。ちょっと納得いかない。まあ、秘書があんなんだからな。あーあ、今夜がこわいな。
 コンビニで適当なメシを買ってふたりで家に帰る。稲垣はマンションのエントランスからすごい、すごいを連発する。
「素敵な部屋だって聞いたことはあるけど、実際見てみるといいねー、高級マンション」
リビングのソファに座ってキョロキョロしてる。
「オレ先にシャワー浴びてくるからメシ食ってろよな」
僕はそれに構わず着替えをとってバスルームへ向かった。なんかもう野郎の扱いと大差ない。風呂から出ると稲垣はリビングの続きのキッチンでごそごそしていた。テーブルの上にはカップ麺と惣菜の空の容器がある。
「なんだ、まだ腹減ってんのか」
「ううん、何か作ってあげようかと思って」
「オレに? オレ、済ましてきたからいいよ」
「そう。まあ、作ろうっても材料ないよね」
「いーの、いーの。オレはこれで」
稲垣をよけて冷蔵庫をあけるとビールを取り出した。自慢じゃないけど僕の冷蔵庫はキレイだ。殆ど物が入ってないからな。
「お前も飲む?」
缶を出そうとすると稲垣は首を横に振って、
「あたしもお風呂はいってくる。着替え貸して」
するっと部屋を出ていった。
 稲垣が再び部屋に戻ってきた時、僕はノートをいじっていた。濡れた髪を拭きながら稲垣は近付いた。僕のシャツはダボダボだ。
「それって、専務の資料?」
「ん。ほぼできてるよ。持って帰っとくか?」
「いいよぉ、会社で渡してよ。まだ最終チェックしてないんでしょ?」
「そのくらいお前がやれよ」
稲垣は苦笑した。
「ねえ、ドライヤーここに持ってきていい?」
話題をそらされた。稲垣は洗面台からドライヤーを持ってくると、隣に座ってブォー〜とやりはじめた。その間僕は割と真剣に仕事をしていた。
「さ、寝よっか」
音が止んだかと思うとすぐに稲垣はすっきりした声と表情で立ち上がった。
 ベッドルームでも稲垣はキレイだのスゴイだの繰り返す。
「きゃ、このベッド。キレイなのがかえってえっちぽい。いざとなると照れるね、はじめてだよね? まともにやるの」
まとも? 何を今さら。
「じゃあ服着てするか?」
僕は後ろから稲垣を抱いて囁いた。
「やん、脱がせて」
稲垣の胸はどくどくいいはじめてて、僕はそれを包み込みながらベッドの上に倒すと上にまたがった。片方の足首を握って高く開くと、何もつけていない下半身があらわになる。
「あん、恥ずかしい」
稲垣は目を閉じた。
「恥ずかしい? 稲垣、はじめて聞いたぞ、そのセリフ」
そのまま片手でするっと男物のシャツを脱がせ、開いた股間に指を突っ込んだ。
「あぐっ」
ぐるぐる回されて稲垣は喘いだ。すぐに蜜が充満し、そこのくぼみからこぼれ落ちそうだ。
「お前、もうきてるぞ」
僕は股間に顔を埋め、舌の先で滴りかけた愛液をすくった。泉のようにそこを覆ってる液体の膜を破壊してしまわないように周りからそろそろと攻めてく。腰がビクンと動いた。
「いや、先っぽでつっつかれたらすぐいっちゃう」
稲垣は吐き出すように言った。はあん? こういうのがいいのか。さっさといけばいいじゃん。つーか、早くいってくれ。
「そういや、これはしたことがないよな」
僕はぴちゃぴちゃいわせる合間に呟き、少しずつ奥に進んだ。開きっぱなしの稲垣の下半身はこれでもかというくらいびんびん張ってる。
「うっ、くっ、あ……」
稲垣の呼吸のリズムが変わった。つま先が少しがくがくしてる。
「早いな。いった?」
無言で頷く彼女。ジュースもついに滴り落ちてる。
「ああ、もう、キョースケの顔が股に入ってると思うとそれだけで興奮しちゃうよぉ」
「純真なこと言うな」
「ホントだもん」
はあっと息を吐くと股を閉じた。胸に手を当てて僕を見つめる。
「会社でやるのも興奮するけど、ベッドだと思う存分やれるのがいいね、声出してもここじゃ漏れそうにないし」
はあ、思う存分するんですか。立ち上がりも早いが回復も早いな。
「そうか。確かにお前のエロ声聞いたことないもんな」
そう言って僕も服を脱いだ。
「あ、それいい。ドキっとした。裸になる瞬間」
催促して腕を伸ばした稲垣の上に重なる。
「ああ、ん」
稲垣は僕の髪を撫で、腕や足を僕の体にからませる。お互い体をうねらせながら深くキス。何度も何度も舌を吸いあい肌を擦りよせ……ま、普通のセックスですね、いたって。
「ああ、気持ちいい、だからセックスって好き」
稲垣は深い息を吐いた。足は自然に開いてる。僕はその股間に手のひらを当て、白い首筋から徐々に下へ唇を這わせた。胸の領域に近付くと彼女はピクッと反応する。その流れた胸を片手で丸く形作ると突起を丁寧に舐った。
「あ……ん」
舌で吸い付いたり舐めたり集中してやってると突起はどんどん伸びてきて、今度は指で揉んでみる。揉みながら稲垣の顔を見ると彼女は本当に気持ちよさそうに喘いでいた。ふと目があう。
「やだ、じっと見てる」
「反応見なきゃわからないじゃん」
「いいよ、キョースケに任せるよぉ」
僕はもう片方の乳首を揉み、一度彼女にキスをした。そしてその体を起こすと僕に背を向けさせてのせた。
「ああん、後ろ? 後ろは弱いよぉ」
そうは言ってもやりたい稲垣は股間に力がなく、僕のももの動きに従って再び大きく開放され、挿入を受けるのである。
「ううん、やっ、まだ入れるの早いよぉ」
「このままやってやるよ」

inserted by FC2 system