恋する季節 3

 気を取り直し、タバコをくわえて火をつける。う〜ん、香りはいいとして軽いなあ(当たり前じゃ)。本数いきそうだな。イヤ、物足りないからってどんどん吸ってちゃそれこそJTの思うつぼだ。そうやってよりポピュラーなものへ誘導され、惜しまれつつも廃盤……。なんて思いながら2本目の火をもみ消した後、女性社員が戻ってきた。僕らは自然にパソコン画面を切り替えた。バレてるとは思うけど一応ね。お仕事再開、四堂は頃合を見計らって部屋を出ていった。
 しかし夕方には禁断症状が出てしまう。軽くても何でもいいから吸いたくなる。ニコチン中毒なのかな。僕はさっきの残りを持って部屋を出た。最寄りの喫煙所は上のラウンジ。重役フロアだけあってゆったりと個別の丸いチェアが並び展望も抜群、ちょっとしたホテルのコーナー気分に浸れるが、実はウチの会社は社長を筆頭に重役の喫煙者は殆どいないので、そこはいつも無人状態という勿体無い空間である。なのでとりあえず吸いたくなったら同じ階の給湯室で済ませる。狭いがあまり使われてないのでいつもきれいだしひとけもないし。吸殻は僕以外のがたんまり捨ててあるけど。決まってフィルターに口紅がついている。秘書課の連中のだ。ここ使うって言うと秘書課と僕の課しかない。ウチの会社、女性の喫煙率が1番高いのは秘書課なのだ。社長の好みによりそれなりの才媛が揃ってはいるが、秘書業もストレス度が上がるのか皆さん中々のヘビースモーカーぶり。
「うふふ、いたいた」
僕が吸ってるとそのうちの1人がやってきた。稲垣知佐美、佐久間専務の秘書である。
「めずらしいな、こんな時間に」
「検診、私のトコ1番最後だったから。遅くなっちゃって」
「あ、そ」
検診ね、それで一時無法状態だったのか。と変に納得する僕。
「って、言ってなかったっけ?」
「さあ?」
「5時半には終わるからって。待っててくれたんじゃないの?」
「何が」
僕がとぼけると稲垣はちょっと顔をしかめた。
「だから検診……やん、もしかしてメール見てない??」
「見てない」
「うそ、じゃ、偶然ここにいたの? マジ」
彼女の、くっきりはっきりした目がわざとらしいくらい丸くなった。
「あたし、すっかりその気分なのに」
「なんだよ」
またか? 今度は僕が顔をしかめた。
「まさかこのまま帰るなんてことしないでよ?」
稲垣の顔が急接近する。
「あの、オレ、タバコ吸ってるんだけど……」
反射的に腰を引きながら言いかけた僕の言葉は完全却下、稲垣は素早く僕の指からタバコを抜くと茶殻入れに投げ捨て、再び僕を見つめ直して言った。
「いつものと違うわ」
「切らしちゃってさ」
「持って来てあげようか」
「え」
「専務の買い置きがあるの。無くなってたでしょ? あたし、外の店まで買いに行ったの」
「でも」
「たくさんあるからわからないわ」
「いいの?」
「いいわよぉ。ねえ、だからぁ、お願い」
オイオイ、タバコでつるのか?? 稲垣は僕の首に手を回し、甘え声で迫る。まつげ1本1本のカーブが確認できる至近距離だ。もう逃げようがない。
「ねえってば」
そしていよいよ片足を上げ、股間を密着させて催促した。
「今日、安全日なの」
かすれた声、吐息が熱くなってる。
「ホント?」
もうどうにもできない。僕は観念した。ちょい息を整えて最終確認だ。
「お前、口紅つけてない?」
「うん」
「(アレ)なしでも大丈夫?」
「うん」
「でかい声出すなよ」
「うん」
僕は彼女の腰に手を回した。彼女は待ってましたとばかりに唇を押し付けてきた。
「ん――」
舌を吸い絡めあいながらその体を抱きかかえ、流し台によっかかって体を安定させると、右手をスカートの中に突っ込んで下着をずらし脱がせた。そして股の付け根まであるストッキングはそのままにして僕の上にまたがらせ、スカートの中を両側から手の平全体で太ももを撫でた。
「あん、も……」
稲垣は色っぽい声と目つきをして体をくねらせると僕の頭部を抱きしめた。髪の毛を指にからめ頬ずりしながら舌を出して全体を愛撫するのだ。胸の揺れを目の前にして僕のテンションも上がる。服の上から鼻や口でバストを探り、太ももから腰、背中にかけて大きく手を這わせると稲垣は更に興奮して腰を振った。スカートがめくれあがっていく。僕はそのぽっかりと浮いた彼女の裂け目に指をあてそっと滑らせた。
「は……ん」
稲垣の体が波打つように揺れた。数回指を動かすとそこはぷっくり熱く膨らみ、そのまま挿入した。とっぷりと付け根まで愛液に浸って……それは接触媒体となって少しの刺激も敏感に感じ取れるくらい気持ちいい状態。僕はその感度を確かめるように突いたり回したり左右に振って、ぬるぬる熟した内壁を刺激した。
「うっ、あ―――……」
稲垣は激しく身悶えし、ますます僕にしがみついた。声を押し殺そうと必死である。僕は完全にそれを封じこめるため、一旦彼女の体を引き離してすぐにきついキスで唇を覆った。

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