恋する季節 20

 びくついて彼女の足は開いたままだ。 肉厚の花びらは僕の目の前にある。ちゅっと唇を触れると彼女は体を震わせ目を閉じた。
「赤くなってるでしょ」
声は息に阻まれて小さい。
「ん。キレイだよ、遊んでる割には」
彼女はうっすら「やーね」という笑いをした。僕はとろりと蜜汁をすくって彼女の口に運んだ。「んっ」ずぶっと根元まで舌が絡まってぬるぬる動く。官能がくすぐられる。僕はゆっくり指を上下しながら言った。
「ホテルじゃなくて店みたいだよな。ここ、ひょっとしてレズホなのかな」
どうもいつものノリと違う。女の部屋でやってるようだ。何もかも女性向けっつーのはやり過ぎじゃないのか? 一方彼女は美味しそうに僕の指をしゃぶって最後べロンとひと舐めした。
「明るすぎるのかしら。電気消してみる?」
そう言って腰をよじりベッドの脇の操作パネルに手を伸ばした。
「えーと……これは何のスィッチ?」
試しに彼女が押すと、蛍光照明が暗いフットライトに切り替わり、ウィィィィーンとメカニックな音と共にベッドの向こう側の壁面収納みたいな白い引き戸が動き始めた。
「わっ」
思わず声が出る。何だよコレ、みたいな。その戸の向こうにはもう一つの空間が開けかけていた。
「忍者屋敷みたい」
それを言うならスパイ映画だろ。まさに現代アクションだ。
「こういう仕掛けがあったのか。ステイ15000円て高いなと思ったけど、納得……」
「やだ、セコ〜イ」
彼女はそこに足を入れた。人におごらせといて何を言うか。ぴちょんという水音。一段低くなったところに浅く水が溜まっているのだ。や、溜まってると言うか 壁を這うように水が伝ってきてるのである。その壁と言うのがまた……鏡ばりなのだ。つまり鏡の上を水がそろそろ動いてるわけで、そこに映った僕らの裸体も うにうに揺れてる。やはり清潔感溢れる白いタイルなのだが下からの弱い灯に変わることでとたんにやらし〜い雰囲気を醸し出す。なぁんだ、本番のベッドは こっちだったんだ。
「きてきて、早く」
せかされるまでもなく僕らは抱き合った。冷たぬるい水に浸って上になったり下になったり。そのうち彼女が攻勢に出た。しゃがんで僕のをくわえると手を添え てぐいぐい動かしはじめる。舌の粘膜が先端を這いつくばり、片手で房をくにゅくにゅ揉まれ、添えた手で皮を引っ張られ戻される。元々濡れているので滑りが よく、さっきの指フェラとはダンチだ。それがまた鏡にも映っていて二重に興奮し、恥ずかしながら僕は時々声が出そうになった。そして遂にいきそうになる。
「は……」
僕はとっさに彼女の顔を離して先端を下に滑らせ、豊満な胸の谷間にひっかけるとぐっと圧した。その刺激と殆ど同時に精液が勢いよく飛び出した。
「あん……」
彼女は僕を見つめた。興奮した所を一部始終観察されてるみたいで照れる図だが、数秒僕は何もできなかった。
「中に出してもよかったのに……優しいんだから」
彼女は胸に残った精液を手ですくってぺろっとなめた。透明な口紅のように唇がてかてかしてる。
「不味いだろ」
僕はやっと言葉を口にした。彼女の濡れた唇が間近に迫ったそのときに、だ。
「奥に出しちゃえばわかんないわ」
彼女は穏やかに微笑んで「キョースケ……」と顔を寄せた。その顔は誰かの顔に重なった。遠い昔の誰か……。姉だ。姉さんが僕を呼んでる顔。どうしてだろう? 全然違うタイプなのに。姉さんは物憂げな大人顔だ。
「んっ」
ぬとぬとの液は僕の唇と重なり、僕は久しぶりに自分の精子の味を確認させられた。生臭いシャンプーのつんとくる苦さ。めちゃくちゃまずっ。胸の隙間の精液が僕の体にぴとっとはりつく。が、すぐに水で洗い流される。彼女が僕を押し倒したからだ。
「あう、あう」
ぴちょぴちょ水しぶきがあがって僕はまた乳首を指で転がしていた。すぐそばにもうひと組の僕らがいるわけで、どんな体位をとってもついてくる。僕はわざと彼女の胸を鏡に押し付けて股を開かせ大陰部を指で伸ばすと無防備になったクリトリスをつつきまくった。
「ああっ、ああ……」
彼女はのけぞって腰をふり、やがてうなり声を上げ上から落ちてくる水をげほっと咽につまらせた。ビクビクきたところで腰を引きずり寄せ入れる。彼女はうつ 伏せで腰だけを浮かした格好でびちゃびちゃもがいた。鏡に映る顔は引きつってグロテスクでさえある。「ぐふっ」と唾液や水を戻して腰はひどく折れ曲がって る。僕はどこまでも突き進んだ。乳房を押さえ力任せにいった後も抜かずに何回も射精した。こういう体勢でないと犯した気がしない。最も原始的なスタイルで ある。ぬるぬるの愛液や精液は水に流され、最後しびれがきてはずみで抜けた後、お互いの性器を舐めあった。どこも熱くなって息はとびとび、ただひたすらに 舌をべろべろ動かしていた。
「ああっ、好き、好きよ」
僕らは舐めあってまた数回いった。それでも彼女はついてきて気を失ってしまうことはなかった。健康的でセックスの強い女はいい。どこまでも上昇し、肌も性 器も吸いつくようにしっくりくる。僕は久々に素に戻ったのだ。水に覆われている感覚、安らかな体勢に……。「これは胎児だ、すっかり忘れてしまっている胎 児の記憶……」意識を失う瞬間、そんなことが頭を過った。

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