恋する季節 16

「ああ、この体あたしのツボ……」
ボタンを全部外しきらないうちに稲垣は深いため息をついて僕の胸に頬をすり寄せた。開いたシャツのすきまから入ってきた指が僕の胸全体を撫でてる。
「すっごいセックスアピールよ。いかにもたくさんセックスしましたって感じ。こうしてるだけでむらむらするの」
事実、抱き締めた彼女の胸はトクトクいっていた。
「お前には負けるよ」
「またあ。男と女じゃ質が違うわ」
「何だよ、質って」
「ふふ。ねえ、感じない?」
彼女は笑いでごまかすと乳首の上で指をストップし、つんつんついばむように刺激した。
「くすぐったいよ」
僕が言うと笑ってちゅっとキスする。
「ちっちゃくてかわいー。舐めてもダメ?」
「男がお前みたいに感じてたら変だろうが」
稲垣は大きくまばたきした。
「感じるヤツいるよぉ。お相撲さんみたいにもこっと盛り上がった胸してる男。あ、アイツじゃないわよ」
彼女は「教えてあげよっか」とばかりに身を乗り出した。別に聞きたくはないけど。止めるタイミングを失った僕……。
「感じちゃうみたいよ。あたしが吸ってたらさ、アヘアヘ言い出してね。『あっ、ちさちゃんみたいなピンク色にしてみたいなっ』って。何したと思う? あた しの口紅塗りはじめるのよ。うっれしそーに塗り塗り。で、あたしに『舐めて消して〜』。でも落ちない口紅だから全然だめなのよ。仕方ないからオイルでクレ ンジングしたの、ぬるぬるぬるぬる……」
彼女は顔をしかめた。僕は苦笑いするしかない。うへぇ。
「やだやだ、もうあんなムチッとした男なんて絶対イヤ。どうして日本の男って肉付き悪いのかしら。セックスも全然ダメ」
「何だよ、お前、(外人の男と)経験あんのか」
「えへ、まあね。ホームステイしてる時とか」
稲垣は舌をだしておどけた。
「も〜感動しちゃったよぉ。パワーあるのよね、腰の振りなんてこうよ。おっきいし。ふふ」
ジェスチャー交じりで明るく笑い飛ばすけれども、こっちは半分しらけ〜だ。
「オレ、外人と比べられたくないなあ」
その分け方気に入らない。誰かにも言われたよなあ、外人の男を見習えって……。
「やだ、比べてないよぉ。あたしが言ってるのは他の男。キョ−スケは違うもん。見た目細いけど筋肉いい感じだし。何かスポーツしてたの?」
僕は首を振った。
「いや、別に。時々やってるだけ」
「ジムとか?」
「ん。あと、サンドトレーニング」
「えー本格的。腰強そう」
「強いぞ、実は」
そう言って二人でクックと笑う。
「背も高いよね。180?」
「そんなとこかな」
「体重60くらい?」
「ん、あるかないか」
「体脂肪少ないでしょ」
「10ないな」
コロコロコロコロ振るなあ、お次は問診かよ。あ、そういえば健康診断来週なんだっけ、と思い出したりして。
「もぉ、この胸日本人じゃないみたい、理想的〜。ツボ、ツボ」
稲垣はまた僕の胸に頬をすりすりしはじめた。まあ、鍛えてるほどじゃないが一応各筋肉ともそれなりに盛り上がって境目もはっきり分かる。が……。
「お前、オレをチェックするのはお門違いだぞ」
「誉めてるのよ。ツボにはまったの」
フォローにもならねえよ。それがどんな相手であれ誰かと比べられるのも査定されるのも大いに嬉しくないことだ。だろう?
「オレもお前の体、ツボ」
突然、僕は上にのっかってる稲垣の体を持ち上げ乱暴に後部座席へ押し込んだ。
「きゃ」
バランスを崩した彼女は半分座席から落ちてしまい、何とかドアにすがって上体を起こすとさっと足を閉じ、みっともない格好を正した。
「なぁに? もう」
「チェンジすんだよ」
「後ろじゃやらないって……」
「なわけねーだろーが」
僕はフンと笑う。せっかく気を遣ってやったのに。もう知らねー。
「やだ、ウソツキ、本気にしちゃったじゃない」
シートを戻して乗り越えるとびっくりした顔の彼女に覆いかぶさった。外は急に暗さが増してる。
「怒ったの?」
彼女はずっと僕を目で追って言った。僕は返事しないでその唇に自分の唇を押し付けた。
「んっ」
強く、口を開いて吸うと彼女も舌を出し、僕の体に腕を回した(してもらいたいんじゃないか、要するに)。足を上げて股間を押し付けてくる。熱い。舌を抜くと彼女の口から情熱的な吐息と唾液がほとばしった。
「ああ……」
火照った体。乳首を摘むと「んっ」と顔がゆがんだ。
「オレ、吸うの結構好き。つけてもいい?」
「もぉ……」
のけぞった顎に噛み付く。向こうも舌を出してこちらを舐めようとする。もう本能だ。ヒルみたいにじゅるじゅる後を引いて喉元から鎖骨に舌と唇は這っていき、ある一点に狙いを定めると強く吸い上げた。
「うぅ……ん」
狭い座席で苦しそうに彼女は腕を伸ばした。僕は吸い付いたままその片足を背もたれに掛け体を開いた。
「ああっ……」
ちゅーという音がして彼女はもがいた。唇を離すとパカッとあいたヴァギナは僕に向いていた。
「濡れてるんだ」
「もうして……」
かすれた声。殆ど音になっていない。
「入れてくれって?」
彼女は無言で頷いた。
「生で?」
頷く彼女の腰を浮かせて挿入すると彼女は僕にしっかり抱きついた。僕は窮屈に体を折り曲げながらゆっくりその中を上下した。ぬるぬるの潤滑油が擦れてぴちゃっと音をたてる。
「あう、気持ちいい、気持ちいい」
彼女は足をばたばたさせた。こんな無理な体勢でも結合は深い。が、わざと抜いてみる。
「や、じらさないで」
彼女は足を使ってなじった。僕はびらびらに先端を滑らせて入り口を探すふりをした。
「ああ、ん、入れてよ」
くちゅくちゅ当てて再びするっと滑り込む。安堵のため息。ずーっと進んで子宮口の先の小さな空洞に押し付けてぐりぐり回すと、彼女は大きな声で喘いだ。
「ああ、ああん、ああ……」
足を開かされたまま上体をくねらせる。再び僕は突いたりかき回したり、を繰り返した。彼女はその突き上げに合わせて声を上げた。
「あぁ……あぁ……」
そのうち中のひだが定期的にきゅうきゅう収縮しはじめた。ぎゅーっと締め付けられる度にそこからピリピリと全身に快感が巡り、抜こうにも抜けない状態になる。僕は吸い寄せられるように続け、大きな声とぴちゃぴちゃいう音が狭い車内に響いた。
「うぐっ、う、あ……」
いきそうになる寸前、彼女は僕にしがみつくと股間に力を入れ、ぎゅうっと下部を圧迫した。瞬間、何もかも止まってしまう。
「あ、はぅ……」
精液を受け止めると力が抜け、片足がだらんと下がる。
「ああ……」
何か言いたそうだが呼吸が乱れて言葉にならなかった。僕はぎゅっと彼女を抱き締めた。たったあれだけなのに二人ともハアハアいって、クーラーの冷気が正面から当たっていてもしばらく汗はおさまらなかった。

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