SUNDAY MORNING
menu bookmark mail information
image by 戦場に猫 , design by レゾンデートル
Love letter from
 いきなり現れて、抱きついてきて、泣き喚く。僕はもう何が何だかわからなくて、ただ彼女を受け止めていた。がらんとした空間に異国の花の匂いが立ち込める。やわらかい髪の毛が天窓からの日に透けてきれいだった。バイオリンみたいな色だと思った瞬間、彼女は背を伸ばし唇を押し付けてきた。
「う」
 目を閉じる間もなく、ビリジアンの瞳が僕を捕らえる。何もできやしない。彼女の舌が僕の舌の付け根に絡んでうねる。唾液が逆流し、呼吸が止まった。思わずむせて、肺が一瞬麻痺する。それでも容赦なく、何度も腰を打ち付けられ、僕は後ろに倒れた。古い木の床がきしむ。直に置いていたカップが倒れ、生ぬるいコーヒー液が背中に広がった。
 息が落ち着くと、彼女はゆっくり僕から離れた。乱れたスカートのポケットから何かを出した。ぐちゃぐちゃだ。差し出された手紙らしきものを見ても僕には理解できなかった。
 僕は黙って首を横に振った。すると彼女はたどたどしい日本語で、パリから来たのだと言った。

photo by camellia
( ▲ TOP )
inserted by FC2 system